忌明けの準備をしながら、hakoさんのことを思い出している。

hakoさんは2001年1月に脳梗塞を発症して、左側完全麻痺で要介護5に認定された。
家の中では、ベットと車椅子の生活。
右手、右足は自由に動かせたので、食事をしたり手紙を書いたりすることは出来たし、話すことにも障害はなかった。
病理解剖で書いたように脳梗塞でダメージを受けた部分の記憶は戻らなかったので、認知障害が出て大変な時も多々あったけど、残された脳は萎縮が少なくていい脳だったので、いい脳の時は、いろんな会話を楽しむことが出来て、このことは本当に幸せだったと思う。
大変だったのは、日常生活のほとんど全ての動作に介助が必要だったこと。
ベットから起き上がる時、寝る時、着替える時、車椅子に移る時、そしてトイレ。
全ての動作に介助が必要だった。
体力のない私にはこれが大変で、何回もダウンした。
介護をしている人がたいていやられるように、私も腰を痛めて入院した時もあった。
「もうダメ」って何度もオットさんに悲鳴をあげた。
この頃は自分の大変なことばかり考えていたけど、今は、一番大変だったのはhakoさんだったんだろうなって思う。
半身不随で生きることは、どんなに不便なことだったろう。
人に頼って生きることは、つらい事がいっぱいあったことだろう。
用を頼んだ時に、「ちょっと待ってね」って言われて、イライラしたこともあったんだろうな。
でも、そのことについて、hakoさんは苦情を言ったり、嘆いたりすることはなかった。
ありのままの自分を素直に受け入れて生きていた。
与えられた自分の人生を、すなおに生きているhakoさんを、私は「すごい!」と思った。

デイに行っても、ショートに行っても・・
「家が一番いいね~。家に帰りたい!」って言うのが口癖だった。
会いに行くと、いつも「家に帰りたい。私を連れて帰ってちょうだい」と言った。
そんな時は、胸がチクチクと痛んだ。
その時の事を思い出すと、今でも、胸がチクチクする。
帰ってくると、玄関で「ただ今!」って大きな声で叫んで、さっさと家の中に入ってしまった。
そして、二人でお茶をしていると・・
「やっと帰ってきた。なんと言っても家が最高!」と言うのだった。
最後の入院で、まだ意識がハッキリしていた頃・・・
「又来るからね」と挨拶すると、「まだ、帰っちゃダメ」って言った。
意識が衰えてきてからは、「帰りますよ」と言うと、首を左右に振った。
しかし、最後の入院では「家に帰りたい」と言わなくなった。
「又来るからね」と言うと、きまって、「今度来る時は、私はもうここにいないかもしれないから、確かめてから来てね」って言った。
その時は、「家に帰りたい」って言われなくて気が楽だと思ったけど、今、思うと、hakoさんは自分の死期を感じ取っていたんじゃないかという気がする。

胸の大動脈瘤が大きくなって、食道を圧迫し、6月頃から食べ物を飲み込めなくなった。
最後はその大動脈瘤が破裂して、突然に逝ってしまった。
普段から「滑り台を滑るようにす~っとあの世に行きたい」と言っていたけど、
望みどうりに、す~っと滑るように、逝ってしまった。
尿の出が悪くなってきたので、主人が夜泊まるかなって言った矢先のことだった。
手術後の主人に迷惑をかけないようにと思ったのかな~。
hakoさんは自分の生きる力を精一杯生きて、さっと逝ってしった。
「もう充分生きた」と言って、さっと逝ってしまった。

庭を見ていると、hakoさんと一緒にチューリップの花を見たことを思い出す。
春先に咲く三色スミレとチューリップの花が大好きだったhakoさん。
毎年秋になると苗と球根を植えた。
私が植えている間、hakoさんは私の作業をうれしそうに見ていた。
昨年の暮れも同じようにして植えたのに・・・
hakoさんは今年のチューリップの花を見ることが出来なかった。
100本のチューリップの花は例年のようにきれいに咲いたけど・・・、
私1人で見る満開のチューリップはつまんなかった。

hakoさんには、いつも優しい笑顔があった。
遺影にはいつも見慣れた優しいhakoさんの笑顔を飾った。
遺影の前に座ると、いつものようにhakoさんが笑ってみている。
「今日はご飯が遅くなってごめんね」
「今日はご馳走がなくてね~」
なんて話しかける。
hakoさんは「takoさん、おなかがへった」とか、
「暑いのに忙しくて大変だね。ゆっくりでいいよ」とか、
「私はご馳走なんかいらないよ。あるものでいいからね」
なんて、笑って返事をしてくれる。

介護を通して、姑と嫁じゃなくて、1人の人間としてhakoさんの人柄に触れたことが、有難い。
脳梗塞でhakoさんが倒れてお世話をするようになってから、私は、hakoさんの素晴らしさを知った。
hakoさんと一緒に過ごした日々の思い出は、私の心の宝物。
hakoさん、思い出をいっぱい有り難う!